本研究で明らかになったこと
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被災地の保健医療体制、ネットワーク
岩手県における医療支援の取組み―東日本大震災におけるいわて災害医療支援ネットワークの活動.
震災後の医療支援に関して、震災直後のDMATなどによる活動、それに続く医療支援隊による避難所診療が行われ、その後の仮設診療所体制と移行していく中で、多数の医療支援隊が活動し、医療支援体制は錯綜した状態となっていた。このことから、支援隊の受入れ窓口の一本化や必要性に応じた医療支援の提供を確立するためのネットワークを構築し活動を行ってきた。その医療支援体制とそれに関連した活動を紹介し、今後の大規模災害時の対策を講じる上での課題について、医療支援の組織化と医療関連支援の段階的実施という観点から論じている。
小林誠一郎, 高橋智, 秋富慎司, 冨岡正雄, 柏谷元, & 赤坂博. (2011). 医学のあゆみ, 238(9), 873-876.
被災地の全戸家庭訪問健康調査から見えたこと–岩手県大槌町に集まった保健師の活動から.
震災直後からの保健師による全戸家庭訪問健康調査の経緯と目的、実施方法を紹介している。全戸家庭訪問健康調査から見えてきたのは被害の多様性、対応が必要なケース、医療保健福祉関係機関の被害状況と事業継続に必要な配慮であった。今後に向けて、医療サービス、保健サービス、福祉サービスにおいて必要な点と、保健師による家庭訪問の必要性と有効性について論じている。
村嶋幸代, 鈴木るり子, & 岡本玲子. (2011). 保健師ジャーナル, 67(9), 792-797.
2011・3・11東日本大震災 保健師による被災地支援の全戸家庭訪問健康調査から見えたこと -岩手県大槌町での取り組み-.
本稿では、保健師による震災後の全戸家庭訪問健康調査の概要を報告している。調査は、住民の健康課題を明確にする、安否確認により住民基本台帳を復活させる、支援が必要な場合に早急に町の保健師につなげる、町の復興に向けての提言を作成するといった目的があった。調査では、3,728件の家庭を訪問し、1万3,935人(86.8%)の住民基本台帳への入力を行った。入力した住民基本台帳を基に、5歳階級別の人口ピラミッドを作成し、今回の震災で「死亡・行方不明」は65歳以上が60.2%で特に後期高齢者の死亡が非常に多いことがわかった。また、家庭訪問では早急に対応が必要なケースが53人(1%)、支援の必要があり229人(4.5%)であり、もっとも多いのは「心のケアが必要」で37%であった。さらに、訪問した住民の中では高血圧者の割合が、一般的な日本人の高血圧の割合よりかなり高いことがわかり、優先度の高い重要な健康課題であると考えられた。
鈴木るり子. (2012). 産業ストレス研究, 19(4), 321-325.
東日本大震災の経験から考える健康危機管理.
岩手県大槌町の被災状況について、人的被害、施設別の家屋被害、避難者の状況と応急仮設住宅の入居状況、大槌町への支援状況など報告している。また保健師による全戸家庭訪問健康調査の経緯、概要について説明している。全戸訪問調査の結果、家庭訪問件数は3,728件であり、死亡者数行方不明者数は高齢者、特に後期高齢者が多いこと、早急に対応が必要なケースでは「心のケアが必要」なケースが最も多いこと、高血圧が全国に比して高く、早急な対応が必要であることなどが明らかになった。最後に、訪問調査後の取り組みと保健師の役割について論じている。
鈴木るり子. (2013). 大阪市立大学看護学雑誌, 9, 83-88.
大規模災害地域における格差拡大と在宅看護の課題‐岩手県大槌町の実態から‐.
震災1カ月半後の保健師による全戸家庭訪問健康調査から見えてきた大規模災害地域における格差拡大と在宅看護の課題について述べている。健康調査の結果から、訪問件数は3,728件、相談件数は5,117件、うち「早急に対応が必要」あるいは「支援の必要あり」は把握件数5,117件中5.5%であり、最も多いのは「心のケア」、次いで「治療中断」「介護問題」であった。「早急に対応が必要」だった53名中34名が高齢者であった。また、高血圧が全国に比して高く、早期の対策が必要であった。在宅看護における課題として、利用者減による在宅系サービスが低下しており、サービス減少による専門家の町外流出などから在宅サービスの展開が困難になり、サービスの格差が拡大していた。減災と防災の2つの側面から平時に対策をとる必要があり、災害後はいかに地域の保健医療福祉の社会資源を早急に復旧させるかによって格差拡大を縮小できると考えられる。
鈴木るり子. (2014). 日本在宅看護学会誌, 2(2), 33-35.