本研究で明らかになったこと
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小児の健康と医療
岩手県 小児科 (特集 東日本大震災と周産期)–(発生直後の状況, 経時的な改善状況).
岩手医科大学附属病院の新生児集中治療室において、地震による通信困難な状況、電力供給が途絶えた際の対応についての検討、市内の病院の燃料不足による重症児の受け入れ要請、その後の電気復旧など震災発生直後の様子を紹介している。また、沿岸部の県立基幹病院の状況と災害発生後の病院機能低下の状態と災害派遣医療チームや地元医師の活動、さらに発生1ヶ月間の院内スタッフや全国の医療救護班の活動、医療支援状況を紹介している。また災害後の妊産婦の情報について、岩手医科大学附属病院が岩手県の周産期医療情報ネットワークシステム事業を担っていることから、妊産婦の情報が病院のサーバに保存されており、情報が流失した被災地においても妊産婦の安否や避難状況の把握、保健指導に役立てられた。
千田勝一. (2012). 周産期医学, 42(3), 291-293.
Design of the nationwide nursery school survey on child health throughout the Great East Japan earthquake.
震災時の就学前児童の身体発達と健康状態を調査するために全国保育園調査を実施した。2012年9月から12月に全国47都道府県の保育園にアンケートを郵送した。2004年4月2日から2005年4月1日(就学前に震災を経験しなかった)と2006年4月2日から2007年4月1日(就学前に震災を経験)の生まれの子どもを対象とした。質問票では、災害の経験、身体測定、病気の有無について尋ねた。結果は、47都道府県から3,624の保育園が調査に参加し、2004-20005年生まれの53,747人と2006-2007年生まれの69,004人の就学前の子どもたちの2つの全国的後ろ向きコホートが設立された。後者のコホートにおいて、1,003人の子どもについて災害に関して特定の個人的な経験を持っていると報告された。大規模データセットにより、災害時の就学前児童の身体的発達と健康状態に関する包括的な研究結果が得られることを期待する。
Matsubara, H., Ishikuro, M., Kikuya, M., Chida, S., Hosoya, M., Ono, A., … & Kure, S. (2016). Journal of epidemiology, 26(2), 98-104.
東日本大震災から7年目「子ども夢ハウスおおつち」から「(仮称)おおつちコドモ未来塾」へ.
2011年度と2014年度に「東日本大震災小児・若年者の健康調査」を実施し、2014 年度の調査では住環境との関連について考察した。子どもと保護者の抱えている問題は、住環境と関連があることが明らかになり、多くの問題を抱えている子どもと保護者に早急に心のケアを含めた継続的な支援対策の構築が必要であると考えられた。特に子どもたちには、成長・発達のそれぞれの時期に「生きる力」を獲得する必要があり、そのための方策を打ち出し、活動を展開していくことが必要とされると考えられた。本稿ではその実践的な取り組みの実例として「子ども夢ハウスおおつち」の活動を紹介している。
鈴木るり子. (2017). 公衆衛生, 81(12), 1015-1018.